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ss隊長と弟と×××

※時間軸バラバラ


他愛のない談笑の最中、ふと怪訝な眼差しを虚空へと向けた男に小十郎は首を傾げた。

「どうした」
「あ、いや…客みたいだ」

ちょっと行ってくると腰を上げた男を制し、手にしていた湯飲みを傍らへ置く。
俺も行くと口にした小十郎へ、男はへらりとした笑みを向けた。



「お久しぶりです、兄さん。お元気そうで何よりです」
「ああ、お前も息災のようだな」
「おい」
「ああ、小十郎は初めてか…直ぐ下の弟、雪兎だ。雪兎、隣のは小十郎。三世先で俺の嫁さんになる予定…いでっ、殴るなよ小十郎」

何が気に障ったのかと隣を伺う男を小突き、予定じゃねえと呟く小十郎を見て、雪兎はくすりと微笑んだ。
兄をよろしくお願いします義兄さん、あ…いや気楽にやってくれと照れ混じりに頭を下げる両者へ苦笑し、男は弟を見据えた。

「わざわざ後追っかけて来て、どうかしたのか」

対峙する兄弟を交互に眺め頬を染める女中に渡された茶を啜りながら尋ねれば、人好きのする笑みを浮かべ礼を述べた弟は途端に目元を赤らめもじもじと指を遊ばせ始めた。
煮え切らぬその態度に隣の小十郎と顔を見合わせた男は、やがて苛立ったように頭を掻く。
見かねた小十郎が、何かあったんじゃねえのかと口を開くと、弟は消え入りそうなか細い声で好きなひとが出来たのですと一言零した。

「そりゃ…目出度いことじゃねえか」

なぁ。
小十郎が男の名を呼び笑みを向けると、男は弟に良く似た照れくさそうな笑顔でそうだなと頷く。
細められた群青がゆるりと滲むのを視界の端に捉えつつ、小十郎は胸に広がる喜びを感受した。
初めて顔を合わせた中だとは言え、男の家族であるならば即ち小十郎の身内でもある。
身内の慶事に喜ばぬ者が有るものか。
兄としての威厳を保ちつつも、隠し切れぬ喜色を匂わせる男が大層微笑ましい。

「それで、祝言は何時にするんだ雪兎」

珍しい姿を見たと内心で喜ぶ小十郎は男の声が随分とせっつく様子で有る事に、遂に吹き出してしまった。
むすくれた顔で睨む男にすまねえと返し、弟を見やり、はて…と首を傾げる。
弟は驚愕の面持ちで頬を真っ赤に染め、口をぱくぱくと開閉させていた。
男の袖を影から引く。
何かおかしいぞと耳打つと、男も首を傾げた。

「しゅ…祝言なんてとんでもない!!僕は…その、そんな、まだ…そんな!!」

涙目であうあう呻く弟に眉をしかめる小十郎の隣で、引きつる頬の男はじゃあ何なんだと語気を強めた。

「婚約の報告か?」
「ちちちちちがいます!!」
「なら交際してるって事か」
「交際だなんてとんでもない!」
「じゃあ、何だ、思いを告げたって事の事後報告か」
「告白!!そんな…こと」

僕にはできませんと俯く弟に、男のこめかみがびしりと脈打つ。
死神の年格好はとんと見当がつかぬが、見やれば弟は二十を越したような風貌であった。
随分と初な男だとある意味で感心していた小十郎の耳に、地を這うような男の声が滑り込む。

「じゃあ、何で、此処に来た」
「好きな人が出来たので、その人を…その、愛おしく想っても良いものかと…相談に…いえ、愛おしいと思うのですが、はずかしくて」

ぶつり。
己自身も時折聞く何かの緒が切れた音に、小十郎はゆっくりと茶を啜る。
握り締められた男の拳に、難儀な話だと耳を塞いだ。



「ソイツとの婚儀の話を俺の前に持ってくるまでは二度と家の仕切を跨がせねえからよく覚えとけこの馬鹿野郎!!!!」



心なしか紅くなっている髪を逆立て激昂する男は、弟の胸倉を掴むと、半べそをかいているその身体を突如現れた空間の中へ放り投げ、荒々しく障子を閉めた。





【どこもかしこも正反対!】

「あの馬鹿何年生きてると思ってんだ、百や二百じゃねえんだ、千単位だぞ!?千だ千、千年だよ!解るか小十郎!!」
「…永すぎて想像もつかねえな」
「初恋っつーのは良い、そこは突っ込まねえ。俺とお前みたいな生涯の恋は得難いし。だがな、」
「さり気なくのろけるな。背中が痒ィ」
「抱いた抱かれたが一切無いってどういう事だ!!性欲とかねえのか!!」
「ばっ…真っ昼間っから何言ってやがる!」
「普通するだろ、ムラムラとか!遊郭だって茶屋だって行くだろ頻繁に!俺だって目を付けた馴染みの為に足繁く通ってるんっ……やべ」
「……ほぅ?」
「か…通っ…通って、た、です。昔だからな?今は行ってないからな?あの…小十郎さん、その…ネギは、」
「そこに直れ、」
「ごめんなさい!!」



―――暫くお待ち下さい―――


「なんでそう、ふらふらしやがるんだてめぇは」
「…忙しそうなときに盛ったら迷惑だろうなと思って。手酷くしたい時もあるし…お前は、愛してるから大事にしたいんだよ」
「はぐらかすんじゃねえ。…ったく、少しは弟を見習って大人しくしやがれ」
「善処する」
「ああ?」
「や…、します。大人しくします」
「それでいい。少しぐらいは遊びも大目に見てやる、だがな…俺以外に気を移してみろ、…見限るぞ」
「なっ…!?ちょ…嫌だ捨てないでくれ小十郎!!」
「おまえ次第だな」


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