此方を見据える右目の鋭い眼光に、男は息を吐いた。
まだ日も高いと言うのに閉め切られた室内は薄暗く、膝を付き合わせて座る人影二つが酷く不似合いに見える。
重苦しい空気が間を流れた。


「なんとか、しろ」
「むり」


地を這うような恫喝の声に、同じ様な深刻さで男が即答する。
原因が判るような事象はなんとかなるのだが、右目の異変は男の所為ではないので如何ともし難い。
ぴる、と右目の頭上で漆黒の猫耳が揺れた。
不機嫌そうに畳をぱしりと尾で打ち、男は強面を歪ませる。


「テメェじゃねぇなら、誰だ」
「…知るか」


男はそっと右目へと腕を伸ばした。
そのまま擽ってやれば、ごろごろと喉が鳴らされる。
ふにゃりと相好を崩し、かわいいなと笑った男に、尻尾をピンと立てた右目は唇をへの字に曲げ、馬鹿野郎と小さく呟いた。



にゃんにゃんにゃん!