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SS異聞録、死神と槍兵



馴染んだ死覇装を脱ぎ捨て現世の装いに身を包んだ主人は、眼前に片膝を着く従僕へ憚ることなく玲瓏な表情を歪めた。
知らぬ間に手甲へ浮かび上がった紋様、良く解らないままに参加させられた聖杯戦争、魔方陣すらない状況で喚び出された英霊…
最も目的は間桐臓硯及び生き過ぎた魔術師の道逝きとはっきりしているので、成り行き参加に取り立て騒ぐことはない。
英霊の事も、まぁ現地で動かせる手足が増えたと思えば損はない筈だった。
損はない筈だった。
大事なことだから二回言った。


「…何で言うこと聞けないのかなオディナさんは」
「…申し訳ございません」


喚び出された英霊が主人にとって相性最悪な『騎士』と言う生き物でなければ。
もとより生きててナンボの死神に騎士道精神を理解しろと言うほうが間違っているのだ。
刈るべき対象に理性がなく、よしんば敵さんに考える頭が有るとしても狡猾か外道のどっちかしかないような世界での騎士道などまるっきり意味がない。
極稀にそういう志の輩が居ないでも無かったが、【何でもあり】が前提に来る世界では大概において出オチだったり瞬殺されたり噛ませ犬として悲惨な扱いを受けるものだ。
別に男は騎士道精神が嫌いなわけではない。
過去の知り合いに騎士も居たし、似たような思考の従者も数多い。
忠義心の厚さも申し分無く、個人的には騎士と言う生き物はとても好きだ。
本当に大好きだ、寧ろ愛しい。


「…勿体無きお言葉」


唐突に飛び出た主人の好意に、『輝く貌』の頬がさっと紅潮した。
後ろへ流された黒髪から落ちる一房の前髪がはらりと揺れる。
悦びに蕩けた色を宿す金色の双眸が気恥ずかしげに伏せられ、主人はちょっとだけイラッとした。
一応反省会と言う名の説教途中に、良い年こいた男が恥じらうな。
その前髪引っこ抜いてやろうか。


「申し訳ございません、主よ」


開閉させた手に不吉な物を感じたのか、槍兵は頭を逸らせた。
主人は深く溜め息を吐き、さてどうしたもんかと首を傾げる。
取り敢えず他のサーヴァントを誘き寄せて間桐の関係者をとっ捕まえ、臓硯を皮切りに芋蔓式で魔術師を地獄へ案内する当初の計画は騎士の暴走でダメになってしまった。
引けといっても引かないし、数減らせっつっても聞かないし。
こっちは余計な警戒食らわないように姿は出せないのにコノヤロウ…自分ばっかり楽しみやがって。


「次邪魔したら戦争終わるまで『ちょろ毛泣きぼくろ』って呼んでやる」


己だって強いやつと殺り合いたいのに、と。
多大なる八つ当たりが槍兵へぶつけられた。


「そんな…!!」
「うるせぇ『しゃいにいwwwwwwふぇいすwwwwwwwww』とか『魅惑のwwwwww泣きぼくろwwwwwwwww』でも良いんだぞ。よし決めた、フリッフリのドレスと男性用ランジェリー着用で卑猥な玩具買い物させよう、決定」
「なんと非道な…!!それだけは…それだけはお止めください主よ!!」
「なら騎士道精神はTPOを考えて発揮しろ」



【Q、チェンジできますか】【A、出来ません】
(主よ、どのように発音しているのですかそのwwwwwwは)
(言えてるぞ)
(な!?)
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