ミステリ大賞かホラー大賞かどっちだったかは忘れてしまいましたが、黒い家を読んでます。
※中途半端にネタバレ有りますのでお気をつけください。
主人公が夫=殺人犯と推理した流れが、何となく気持ち悪い。
言い表せないもやもやを感じます。
根拠の無い勘ですが、サイコパスって奥さんなんじゃないだろうか。
まだ読み終わってないので、わくわくドキドキしながら進めたいと思います。
これは面白い、いい本です
※転生立花、昔の話
良いのかと問う声に苦笑を返し、男は隣に立つかつての級友を眺めた。
同じ城に仕える今の同僚は昔より上背が伸びたようで、目線が並ぶ。
最後に皆で集まったのは何時かと思い巡らせ、気の抜けたような顔で笑った。
あの箱庭から巣立ってこれまで、誰にだって会う事はなかった。
「仙蔵と離れて…良かったのか」
「…良いんだよ」
戦の気配がひたひたと忍び寄る晩秋の宵、敵方の忍に一つの姿を見つけた男は、さらさらと風に靡く髪や掌に吸い付くような白い肌を瞼の裏に思い出し、瞠目する。
「なぁ長次、俺は死ぬよ」
「……ああ」
「仙蔵は、俺を殺すだろうから」
「……仙蔵は」
お前を、と。
言いかけた同僚へ、男は黙したままに首を振る。
命じられた単独突破は死間に他ならず、遠からず死ぬであろう男はほんの少し寂しげな色を過ぎらせ口の端に笑いを乗せた。
「長次、俺はな、決めてるんだ」
俺は彼奴に殺されたいんだよ。
そう軽やかに呟いた男が、明日は涼しくなるだろうなぁと何でもないことを嘯く様を眺め、無口と称される同僚は深い溜息を吐いた。
【egoism】
(俺は薄情な男だから、きっと彼奴を忘れるだろう)(一時の感傷を嘆き、そうしてやがて忘れてく)(その点、彼奴はしつこくて、情が深くて、一途な可愛い男だから、きっと俺を忘れない)(自分が殺したとなれば、なおさら。いつまでだって覚えてる。次の世が在るというなら尚更だ。なぁ長次、俺はめんどくさがりだから)(探すより、探される方が性に合ってるのさ)
「中在家ー、この前話してた本…って立花かよ」
「私で悪いのか」
「んなことねーけど」
頭上で軽口を叩き合う級友を眺め、かつての男であった青年は、昔の同僚だった今の青年へと視線を流す。
あの男は本当に己を良く理解していたと内心一人ごち、友人思いの無口な青年は薄情で心の足りないかつての男だった青年の頭へ、現国のノートを勢い良く振り下ろした。
(いきなり何だよ中在家!?)
(私は…仙蔵の味方をする)
(長次…)
(いみがわからねー……)