アニパニ(伊達編)
――――――待て。
まてまてまてまてぇえ!!
起き抜けで違和感のある腕を、頭と尻に何度も宛がい、襦袢がはだけるのも構わずバタバタと世話しなく動かし、脱力した。
何かな、頭に有る二つのふかふかは。
何かな、尻に有るふっさもさな毛は。
自室を矢のように飛び出し鏡の設置された洗面所を目指す。
途中で聞いた黄色い声は気のせいだ。野太い声も気のせいだ。
方々の体で鏡の前に立ち、ついに崩れ落ちた。
「何だよコレ、何で俺耳と尻尾付いてるの……」
ちらりと視線を下に遣れば、気分に忠実なのか、へにゃりとへたった尻尾。
すがるように鏡を見れば、以前どこかで目にしたことの有る大型の西洋種のような、立派な犬耳が頭からにょきりと生えている。
恐る恐る尻尾を掴み、引く。
鋭い痛みと共に作り物ではないと言う実感がじわじわ沸き上がる、ついでに、尻尾にはちゃんと実が入ってた。
「原因は……アイツだな」
考えるまでもない、鉄だ。
昨日珍しく行商に現れたと思ったら怪しい飴を試作品だからとタダで置いていった、御抱え万屋のアイツだ。
怪しげな金魚から公式の奴隷まで、何でも買います何でも売りますが信条の鉄なら可笑しくない。
というかあの飴以外元凶思いつかな…………
「ああぁああぁあ!!!!」
やっばいんじゃないだろうか、昨日飴を食べたのはノリノリだった政宗と、政宗に喰わされた俺、それから、無理矢理口に突っ込まれていた小十郎。
二人とも餌食になっている可能性が高い、って言うか十割なっている。
取り敢えずこっから近いのは小十郎だと目星を付けて、走り出した。
続