「というわけで、綿貫芳樹です。よろしくね、咲良ちゃん。」
「あわわ………高学歴、高収入、高身長の3Kが揃ったイケメンが目の前に………。」
「ちょっとちょっと、私の婚約者だからね?」
「あ、うん。満月ちゃんの婚約者だもんね……………。」
「で、相手の正体についてはわかったのかい?」
「大蛇でしょうね。」
「……………え、蛇?蛇の妖怪?」
「何か、変わったことはなかった?例えば何処かへ行って、社みたいなのを見たとか。」
「………そういえば、この間の遠足で社みたいなのを見たんだけど………。
何もお供えせずに、手を合わせたよ。」
「………その時に魅入られたか。」
「な、何で!?私、美味しくないよ!?」
「いや、そう言う問題じゃないんだ。妖怪にとって霊力の高い人間は嗜好の餌なんだ。」
「………私が嗜好の餌。く、食われたりしないんですよね………?」
「そうならないためにも満月ちゃんが動くんだよ。」
「そうそう。大船に乗った気分で。」
「………はぁ…………。」
「さて、近いうちに会おうっていうぐらいならこっちから仕掛けるとしますか。」
「そうだね。その社に行こうか、咲良ちゃん。」
「え、あ、はい!」
続く。
日本、桜庭市。
「…………………お前が小鳥遊咲良かえ?」
「………え?誰?」
「お前はほんに美味しそうじゃのう。近いうちにまた会おうぞ。」
「…………どういうこと?美味しそうって……………。」
「……………どうも咲良ちゃんは妖怪に魅入られたらしいなぁ。
今の話を聞く限りだと。」
小鳥遊家で女子校に通う16歳の少女、咲良は伯父に夢で見た事を話した。
「妖怪って架空の生き物か既存の生き物の見間違いかと思っていたんですけど。」
「いやいや、これがいるんだよ。現実に。
美味しそうって言われたんだろう?」
「…………私、食われちゃうんですか?伯父さん。」
「そうしないためにも、協力をして貰わないとなぁ。」
「協力?」
「そ。知り合いに妖怪がいるんだ。」
「…………というわけで初めまして。姫宮満月です。」
「あ、どうも。小鳥遊咲良です。…………えぇっと、満月ちゃんって呼んでも?」
「あ、いいよ。同い年だし。咲良ちゃんって呼ぶから。」
「………………私、美味しそうに見えるかな?」
「うーん。まぁ、妖怪の種族や個体差にもよるけどね。
咲良ちゃん、夢に出てきた妖怪に美味しそうって言われたんだよね?」
「う、うん…………。」
「一般の人に比べたら、餌になりやすい対象なんだろうね。」
「な、なりやすい対象!?」
「私は狐の妖怪で、精気を奪うんだけどね。
絶倫の人と相性が良いの。」
「…………満月ちゃん、狐の妖怪なの?」
「そ。九尾の狐。まぁ、それは置いといて。でも今まで妖怪に目をつけられたことは?」
「な、ないよ!?16歳になってから急にこんなことに……………。」
「まぁだよね。……………力仕事は芳樹さんに任せてもらうか。」
「芳樹さんって………人気絶頂中の俳優さんの?」
「あ、幼馴染で婚約者なの。」
「………うっそぉ!?ファンの皆は知っているの!?」
「うん、知っているよ。」
「うわぁ……………………。」
「………何に対してのうわぁ、かは聞いておかないでおくね。
さて、まずは何の妖怪かを調べないといけないね。」
「……………何の妖怪かを調べる必要があるの?」
「そりゃあね。伝承とかが残っているなら退治方法もあるだろうし。」
「あ、なるほど…………。」
「夢に出てきたってことはそれなりの力を持っているってことになるだろうしね。
覚悟しておいた方がいいかも。」
「か、覚悟か……………。」
続く。
かつて、中国、インド、そして日本をまたがり国を滅ぼそうとした狐の大妖怪がいた。
その名は「白面金毛九尾の狐」。
人間に討たれた後、その怨念は殺生石に託された。
だが、その石もまた人間によって討たれた。
しかし、白面金毛九尾の狐はひっそりと1人の人間に転生したのであった…………。