「………それではここが姫宮満月様のマイルームとなります。
どうぞご自由にお使いください。」
「ありがとうございます。」
SE.RA.PHのAIに案内されたマイルームに入った満月は自身が召喚したサーヴァント、
セイバーに椅子を勧めた。
「私は平気ですが。」
「いやいやいや。座ろうよ。対等な立場にいたいから。
そりゃ、主従関係は大事だけど。」
「………そうですか。わかりました。」
満月の言葉に納得したセイバーは椅子に座った。
「………というか、あの有名なアーサー王を引き当てるなんて…………。
後が怖いわぁ………………。でも意外だった。
アーサー王が年端もいかない少女だったなんて。」
「意外でしたか?」
「うん。でも嘘に嘘を重ねたうえに、国を守るために立ち上がったんだもんね。
アーサー………いや、アルトリアか。」
「確かに男性として振る舞ってはいましたが……………あまり驚いていませんね、満月。」
「私だって男性として振る舞う時がたまにあったから、ね。でも規模が違う。」
「…………そうだったのですか。」
「まあ、何にせよ。このSE.RA.PHの聖杯戦争はトーナメント式みたいだからさ。
決勝まで突き進めたらいいね。」
「はい、そうですね。」
「………うん、よろしくセイバー。」
続く。
「………ここがムーンセル・オートマトンの中にある霊子虚構世界SE.RA.PHか…………。」
姫宮満月は地球と何ら変わりない空間であることに驚きつつも、SE.RA.PHの中を歩いていた。
中世ヨーロッパを意識したかのような空間に、満月は1人歩いている。
「お、あいつも聖杯戦争の参加者か?」
「まだ年若いな。10代後半か?」
「この世界にアクセスしたら勝利しないと、帰還することできないのにな。」
「(随分とまぁ好き勝手言ってくれちゃって………。この体は分身体なんだけどな………。)」
NPCの言葉を無視し、満月は召喚の儀を行う場所に移動した。
「………………ようこそ、SE.RA.PHへ。召喚の儀を行いますか?」
「お願いします。」
AIの言葉に従い、満月は召喚用の魔法陣の上に立った。
「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。
降り立つ風に壁を。四方の門は閉じ、
王冠より出で王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)
繰り返すごとに5度、ただ満たされる時を破却する。
…………告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ………!」
召喚用の呪文を口にし、満月はサーヴァントを呼び出した。
「…………問おう。貴女が私のマスターか?」
続く。
西暦20××年。
月面に人類のあらゆる叡智を超える物体が発見された。
「ムーンセル・オートマトン」と呼ばれるその物体は
あらゆる事象をコントロールすることが可能な力を持つことが後に判明する。
意志ある者が持てば世界さえも掌握できる万能の願望機「聖杯」に等しい
この物体を手に入れるため世界各地の組織・勢力が「ムーンセルオートマトン」の
作りだす霊子虚構世界「SE.RA.PH」にアクセスし、「ムーンセル・オートマトン」が
自身にふさわしい担い手を選別するために行う「聖杯戦争」へと参戦する。