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偽人語り(ホラー擬き)

「なぁなぁ、ツナ!『いつひとさん』って知ってるか?」
「知らないけど…───誰?芸能人?」

違う違う、と爽やかに笑うと、実はさ、と身を乗り出してきた。

「野球部の連中から聞いたんだけど、『理想の自分』が見えるっていう話で…―――」
「あ、知ってるよ!」

可愛い声で、そう声をかけて来たのは京子。親友の黒川花を連れてこっちにやって来た。つい片想いに胸が高鳴って身体が起き上がる。

「『いつひとさん』でしょ?最近、並盛で噂になってるんだよ?」
「それって、どんなの?」

とても癒される声に、顔がにやける。
横にいる黒川は、腕を組んだままこちらを見下ろしている。呆れているような顔だ。
一方、京子はあのね、と無邪気に笑った。

「並盛神社の裏手にある池があるでしょ?あの水を夜の12時に覗き込むと、『理想の自分』が見えるの。それが『いつひとさん』だよ」
「でもわざわざ池を覗かなくても良い奴でしょ?池の水を洗面器に張ったりとかしても見えるとか」
「そうなんだよね」

うふふ、と笑ってくれる顔が本当に癒される。

「それって…続きはありますか?」
「え?続き?―――うん、あるよ?」


獄寺が丁寧に聞くと、京子はこくりと頷いた。それでね、と獄寺を見つめて続きを紡ぐ。

「ずっと見てると、『いつひとさん』が自分に気づいて手を伸ばしてくるんだって。それに自分も手を伸ばすと、『いつひとさん』がこっちに来ちゃうんだって」

怖いよね、と何でもないように笑う京子。綱吉は逆に笑うことなど出来ずに寒気を覚えた。

「そ、それって…―――怪談?」
「オレは噂だって聞いてるぜ?」

首を傾げた山本はその後、ポリポリと頬を掻く。しかし、京子はあれ?と違う反応で首を傾げた。

「私は『おまじない』って聞いたけどなぁ?」
「おまじない?」

そう!と京子がまたにっこりと笑ってきた。

「手を伸ばしさえしなければ、後は運が良くなるんだって!この『おまじない』やって、運が良くなったって人がいっぱい居るみたいなの!何か、普段出来ないことが出来るようになったんだって!」
「へぇ、そうなのか!それは初耳なのな!」

山本もぱっと表情を明るくして、にっこりと笑う。
やってみようかな、と呟いた山本を余所に、黒川はでも、と続く。

「他にもやってみた子いるけど、その子は何にもなかったって言ってるわよ?理想の自分も見えなかったし、至って普通だって」
「え?それ、本当?」

京子が首を傾げながら返せば、黒川は勿論、としっかり頷いた。



「それ、『運が良くなった』とは言いませんよ」



黙って聞いていた獄寺が、静かに口を開いた。
綱吉は少し違和感を感じながら見やると、獄寺は眉間に皺を寄せて人差し指を立てた。
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捜し物語り(ホラーのつもり)

「ねぇ、お兄ちゃん。中に入っても良い?」

了平の病室をノックしたのはこの子のようだ。顔が少し女の子っぽい。
人形をしっかり抱き締めながらじぃっと綱吉を見ていた。

「どうしたのだ?沢田?」
「えっと、男の子が何か…」

了平は目をぱちくりさせると首を傾げる。

「男の子?」
「はい。中に入りたいとか言ってますけど…どうしますか?」

了平はしばらくこちらを見たまま黙り込んでいた。
しかし、ふむ、と呟いて口を開いた。

「よく分からんが、入りたいなら入れてやると良い」
「だって、君…───」



綱吉がドアの前に居る子供へ顔を向けた。

「ありがとう!お兄ちゃん!」





後ろから、声がした。





「お?お前いつの間に居たのだ?」

了平が不思議そうに問い掛けている。
後方を振り向けば、あの男の子が了平のベッドにもたれかかっていた。

え?
今の子…いつの間に?

綱吉は再び顔を戻して目の前の景色を視界に納めた。
向こうに男の子は居なかった。
当たり前か、と呟いてドアを静かに締めた。
再び病室と廊下は隔てを得た。

「ねぇ、お兄ちゃん。実はね、僕捜し物してるんだ」
「む?何を探しているのだ?」

楽しそうな声が後から聞こえてきた。
綱吉は離れようと踵を返すそれと同時に腕が取っ手に引っ掛かった。

「お人形の手と足が両方共無いんだ。何処にあるか分からなくて探してるの」
「それは大変だな…───」

腕に走る鈍い痛みに、綱吉はもう一度ドアと向き直る。
そして、気付く。



「お兄ちゃん、探してくれる?」





ドアと綱吉の間。
子供が『自分にぶつからずに』擦り抜けられる幅など『無かった』。
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隠し神語り(ホラー)

「…そうだね。 まずは何で僕が君だけを捜索係に選んだか…───だね」

ぽつりと呟いた雲雀。
いきなり立ち止まって、ゆっくり振り向いた。

いつもは刺々ししくて近寄りがたい雰囲気を醸し出す雲雀。
しかし、今は…。



「雲雀さん…?」



松明に揺らめいて照らされた雲雀が、年相応に幼く、儚く見えた。


∞∞∞


雲雀の指示の元、クロームが『集中できるよう静に』ということで、犬を除く五人が陣から少し離れた所に集まっていた。
山本はクロームの集中を阻害するであろうランボを眠っている間に綱吉宅まで運んでいる。
残りの獄寺、了平、千種、リボーン、マーモンが円を描いて座っていた。

「おい、貴様。 人を探すのに二人だけで良いのか? やはりオレ達も行った方が…───」
「『ただの』人探しなら、人数は多い方が良いね。 でも、これは最終的に『相性』なんだよ」
「はぁ? 意味が分からんぞ。 きっちり説明しろ!」

了平がそう声を張り上げると、マーモンは小さく溜め息を吐いた。

「さて、どうやってこの馬鹿には説明した方が良いかな…───」
「大丈夫だ。 俺が理論から叩き込んでやる
「もうその説明方法から間違ってるんだけど、僕は本当にどうやって説明したら良いの?」

マーモンがすかさず突っ込むと、リボーンは口を尖らせた。

「理解能力が高い山本を行かせたのは失敗だったかもな」
「良い…早く説明して…」

千種が説明を促し、マーモンは再び溜め息を吐いた。それから、ふーむと呟くと、フードを引っ張った。
リボーンがマーモンを一瞥して帽子を上げる。

「率直に言うとね。 今回の事例は『神隠し』なんだよ」
「神隠し…」

ふむ、と頷いて数秒。



「んなわけあるか! 神隠しってのは、山の中に人が消えるって言う、昔の伝説じゃねぇか!!」



青筋を浮かべて獄寺が声を張り上げた。それに対し、マーモンはぁーと声を上げる。

「じゃあ話はこれで終わりだよ。 信じられない奴には話すだけ無駄だからね」
「なぁ?!」
「現に一人消えて、現に一人通信役をやった人が居る。 それでも否定しようなら僕から話すことは何もないよ。 だって、この話は全て、『実際誰も解明できていない非現実』なんだからさ」

くすりと笑うマーモンが、獄寺を見るように低い位置から顔を上向ける。

「君は頭が良いから話しをすれば信じなくとも理解はしてくれるだろうさ。 でも、それじゃ駄目なんだよ。 だからこそ君は『六道骸の捜索』には『選ばれなかった』」
「?!」

獄寺の顔が歪み、マーモンの小さい口がにたりと笑う。
その言葉が自分の中に大きな衝撃を打ち込まれたのを、獄寺は感じ取った。

「君だけじゃないよ。 あと『超馬鹿』と『引きずり込まれた者』も駄目さ」

その言葉に、千種と了平の眉が確かに寄った。

「これで初めに戻るのさ…───『ただの』人探しなら人数が多ければ『当たる』けど、『怪異』が交じった人探しは、その人物と怪異の『相性』が合わなければ、その怪異とは『当たらない』んだよ」

視線を反らし、獄寺の口が引き結ばれる。了平は腕を組んだままうんうんと頷いた。

「大体さ、『自分の存在に気付いてくれない奴』とか『自分の事を否定する』奴に君達は会いたいと思う?」

それに眉を寄せたのは獄寺と千種だった。
了平も意味を理解してもちろん、とマーモンを見やる。

「会いたくない、というか、そんな奴とは出くわせないのではないか? 気付いてもらえないのだろう?───というか、そんな最低な事をする奴は誰だぁああー!!」

騒ぎ立てる了平に、マーモンは小さく、誰にも聞こえないように溜め息を吐いた。
君のことなんだけどと言ってやりたいが、極限鈍感男、笹川了平が気付いてくれるわけない。
話を聞いて眉間にシワを作っていた獄寺が、まさかとマーモンを睨みやった。

「おい! 『たったそれだけの事』が『相性』だっていうのか?!」
「その通りだよ。 でも、『たったそれだけ』の相性に君は『当てはまらなかった』…────」

獄寺のその発言を嘲笑うかのように、マーモンがくすりと笑った。

「『信じる』という行為は大事なんだよ。 『今回の怪異』は、自分の事を『信じてくれない』、『気付いてくれない』奴の前なんかに顕れてくれないのさ───だからこそ君と笹川了平は『外され』、沢田綱吉が『選ばれた』んだ」

マーモンを睨み付けながら、ぎりりと唇を噛む獄寺。そんな様子を嘲笑うようにマーモンは話を推し進めていった。

「あと、そっちの大人しい君は…───自分で分かるんじゃない? お守りに『肩代わり』されてるんだからさぁ?」

こちらを向いて話された千種。虚ろな瞳を静かに閉じて、まぁ、と呟いた。

「探しに行って、出くわしたが最後…『帰って来れない』…」
「大当たり。 君が行けば確かに怪異に『当たる』けど、引っ張り込まれて帰ってこれない───六道骸と一緒に引き込まれてオダブツだよ」

ばさりと立ち上がり、マーモンは獄寺と千種を一望できる高さまで舞い上がる。

「さて此処で少し話を換えてみようか?」
「何?」「?」

獄寺と千種が同時にマーモンを見やった。
皮肉のこもった声が、放たれる。

「君達、幽霊に意志はあると思うかい?」

そう言われ、獄寺と千種が目を瞬いた。再び、了平がうんうん頷くと千種が口を開いた。

「…考えた事はないけど……無いんじゃない……恨みとか、怨念はあるだろうけど…『意志』とは関係ないんじゃない…?」
「獄寺隼人はどうだい? 君も、考えた事なんてないんじゃないの?」

再び眉を寄せ、ただでさえ付きが悪い目付きを悪くする。口元に拳を持っていき、それを覆った。
静かに過ぎた時間の中、獄寺は漸くマーモンに視線を移した。

「信じられないが、『ある』と思う…───じゃなきゃ、クロームを欲しいなんて思わないんじゃねぇか? それに、さっきの話からすると怪異にも『意志』があると考えて良いと思う…───どうだ?」



しばしの、沈黙。

視線が、マーモンへと集結した。



そして沈黙を破るように、マーモンがふむと呟いた。


「まぁ、それぞれ正解なんじゃない?」
「はぁ?!」

空気をぶち破る発言をしたマーモンに、獄寺が声を荒げた。
しかし、マーモンは気にする様子もなくクスクスと笑って手を広げた。

「今の質問はお前達の怪異に対する意識を『向けさせる』為のちょっとした質問さ。 しかも怪異ってのは幽霊だけが起こすものじゃないんだ…───まぁ、『幽霊って呼べる』のも謎だけどね」

見下ろすように浮いていたマーモンはそろそろと下降し、獄寺と千種の前に降り立った。

「ともかく。 どんな答えであれ君達は『怪異』という『現象』に対して『考えて』くれたろう?」

口を引き結んで、マーモンを睨み付ける獄寺。
同じく千種もマーモンを見て、了平はうんうん頷いた。

「その意識があるなら、少なからずそれぞれの怪異には対処できると思うよ」

それぞれの怪異…?

獄寺の眉が、ぴくりと寄った。

「おい、それってどう言う───」
「さぁて。 君達の考え方が変わったかもしれない所で『神隠し』に対する『君達の質問』を受け付ける…───それ以外は『質問者から』追加料金いただくよ」
「んなっ?!」

それ以上の、それ以外の質問を撥ね退けるようにマーモンは釘を刺した。そのあと、当然だろ?と、獄寺の方を見やる。

「今回、僕が貸すのは『神隠し』に対する知識だけさ。 『それ以外の怪異』に対する知識は『現段階』で『完全』に『必要無い』だろ?」

獄寺の顔が、ぴくりと歪んだ。千種はそんな獄寺を一瞥して、小さく溜め息を吐いた。
一段落吐いたと判断した了平が、その台詞を待ちわびたかのように了平がぴっと手を挙げる。実に真っ直ぐ伸びた綺麗な挙手だった。
すると、マーモンは了平を見て口を開く。

「『お前』以外の質問を受け付けるよ。 僕の話、最初から全部分からないでしょ?」
「あぁ。 さっぱりだ」

案の定の答えにマーモンは小さく溜め息を吐くと、了を再びみやった。

「なら君は理解しなくていいよ。 それも『怪異に対する対処方法』の一つだからね」
「?」

獄寺と千種に向き直り、シニカルな笑みを浮かべてマーモンは口を開いた。



「さぁ、『君達の質問』を、受け付けるよ」
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常夏バレンタインデー

ばつんばつんとマイクを叩いてテストを繰り返すG。きーんという耳の痛い高音を響かせてから、Gは普段よりも深く皺を刻んで挨拶をした。
そして。


《これから、『バレンタインデー』を始めます》


「は?」

リボーン、コロネロ、スカルが首を傾げる。
風は目をパチクリさせて、ヴェルデは全く聞く耳を持っていない。そして、綱吉は「あれ?」と首を傾げてチョコレートの箱を見やる。
マーモンから貰ったフィルムで中が見える箱と、教室で渡された柄入りの箱を見比べた。

《ルールは…まぁ、チョコレートを奪えって事だ》

それは日本のバレンタインデーでもしないけれど、と綱吉は思いながら箱を開けた。この時に既に、綱吉はボンゴレの超直感を発動させていたのかもしれない。

《基本はフィルムで中身が見えるチョコレートだが…中には、完全に箱の中に入ってしまっているチョコレートもある…その手のチョコレートは得点の入ったチョコレートだ。 普通のフィルムは1点。箱入りのチョコレートはそれぞれ点数かいてあるが…》

何故か、自分のチョコレートには金箔のようなもので『100pt!』とチョコレートの中央に印刷されていた。

《取り敢えず、最高得点は100ptだ》

ぴし、と自分の体が強張った気がした綱吉。

《ポイントが付いているのは、ボンゴレ、アルコバレーノの特待生クラスのチョコレートだけだからな》

更にGは、さらっと続けた。

《まぁ、上位5名の人間には…本日アルコバレーノの特待生クラスに『空き』が大量に出来た。ボンゴレクラスの連中でも飛び級っつーことで。で、そうそう。特待はチョコレート奪われるなよ。クラス落ちとか、あれだ。落第も有りうるからな。
 手段は問わん。殺さない程度にやってくれ。
 それと、チョコレートには発信機とポイント精算機能が仕込まれてる。誰かの手に渡ったら学生証のカード磁気から塗り替えられてこっちのパソコンに記録されるから、カードも失くすんじゃねぇぞ。
 まぁ、時間内に自分のチョコレート取り戻せば良いけどな》
「は? 何それ…―――今時そんなハイテクなプログラミング有るかよ…」

そう呟いたスカルにGは「これぐらいだな」とやる気なさそうに呟いた。

《ボンゴレとアルコバレーノクラスの特待、分かったら武器用意しとけ。テメェら先にスタートだ》
「は…?」

Gの発言に、綱吉達は一様に首を傾げる。

《講堂は近いが、そこからでも逃げるのに十分距離あるだろ。特待以外は講堂に集まらせてるからな。制限時間は今から午後3時までだ》

Gの言っている意味を理解出来ずに、綱吉は放心する。
つまり、と回転の宜しくない思考を巡らせて、ある結論に辿りつく。
特待生は、本来なら教室待機で、一般生徒のみここに集めている―――つもりなのだろう、Gは。
みるみるうちに血の気が引いて行く綱吉に対して、周りの(ヴェルデ除く)リボーン達は血が上ったようだ。
綱吉はチョコレートを慌てて懐にしまって、全てを悟る。自分が『原因』であると。
「くそっ」と、リボーンとコロネロ、スカルが呟いた。

《あー。もう良いか。一般生徒もスタート》

適当に、Gがスタートを告げた。


「あんのクソヤロぉおおおおっ!!」
「爺ちゃんの馬鹿ぁああああっ!!」


綱吉達はありったけの空気を腹に吸い込んで、怒鳴り上げた。そんな怒声は、始まりを告げた『バレンタインデー』というチョコレート争奪戦により喧騒に掻き消される。

『バレンタインデー』に、ときめきという名のドキドキではなく、クラス落ちという恐怖のドキドキが綱吉の胸の中で開花した。
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セッタン・テンポ学園本編(基本虹ツナ)

広大な敷地を誇るセッタン・テンポ学園はとにかく広かった。
学校は四連に分かれていて、それぞれ中等部、高等部の学校に分かれている。残りの一棟は職員室類の棟である。
三階は基本、生徒教室が密集していて、二階が中、高等部勉強専用の階。一階はと言うと実技を行う教科、美術や体育、運動部の部室とかたくさんある。生協もあり、昼頃になれば一番賑わう階だ。全部連絡通路で繋がっている。
ちなみに、小等部は学年が多いため別に学校がたてられている。

「広いなぁ…初めてだよ、こんな学校」
「まぁ滅多に来れるような学校ではありませんからね」
「そうだぞ!コラ!」

綱吉は辺りをきょろきょろと見回している。
好奇心旺盛な子供みたいだった。高等部の特待生ピンを付けていなければ誰もが彼を中等部の学生だと思うだろう。
コロネロは、風を連れて、綱吉を校内案内していた。リボーンも誘ったが、めんどくさいの一言で片づけられた。
確かに、面倒なのは認められたのでそれ以上は無理に言わなかった。

「彼は見ていて飽きませんね…スカルも来たら良かったですね」
「あいつは昼食担当だろ、コラ!」
「そうですね。彼のコネがあるから美味しいお弁当も頂けるのですから、感謝しなくては」

謝々、と掌を合わせた。

「凄い!中庭だっ!」

目をキラキラさせて窓にべたりと張り付いている姿に、コロネロは精神年齢を疑いたくなってきた。

「あいつ…本当はいくつなんだろうな。なんか、童顔にも程があるっていうか…」
「直接聞いてみたらどうでしょう?」
「いや。答えは分かり切ってるだろ?」
「そうですか?案外14歳かもしれませんよ?」
「それだったら中等部…―――あぁ、そうか。学力高ければ飛び級出来るもんな」

マジマジと、改めて綱吉を見て、一体いくつなんだろうかと頭を悩ませる。
すると綱吉はこちらを向いて手を振ると、駆け寄ってきた。
二人の前で立ち止まると、見上げてきた。

「あの。今更気付いたんですけど…―――オレ、目立ちますか?」
「ん?」

綱吉は辺りを見回してから、もう一度こちらを見てきた。

「気のせいかな…何か、見られてる気がするんですけど…」
「あぁ。多分気のせいじゃないと思いますよ」

風が持ち前の笑顔を浮かべたまま。綱吉の答えを紡ぐ。

「私達アルコバレーノクラスは、昼休みとか教室から出ないんですよ―――向けられる視線があまり好きじゃなくて。知っていますか?この学校にはいくつか普通の学校とは変わったルールがあるのですよ?」
「え?」

首を傾げている綱吉は気付いていなかったらしい。
向けられている視線の中に『殺気』が混じっていることに。
風は綱吉の肩を掴み、たんっ、と床を蹴った。
途端、綱吉の肩の上で逆さまになるとそのまま後ろ脚を身体ごと振りおろした。

「ぶべっ!」
「ぶべ?」

鈍い音が耳の奥に届く。
綱吉はくるりと振り向くと顔をさぁっと青くした。
当然である。風がたった今、瞬殺と言っても過言ではないスピードで綱吉の真後ろにいた巨体を一発で仕留めたのだ。

「ほら、オレ達って高等部で特待生クラスだろ?高等部はアルコバレーノ、中等部はボンゴレ、小等部はマーレって名前で分けられてるんだ、コラ!で、オレ達を負かせばそのクラスに昇進できるようになってるんだぜ!コラ!」
「無茶苦茶ぁああ?!」
「そうか?結構刺激的で楽しいぞ!コラ!実践訓練にもなるしな!コラ!」

綱吉はガタガタと身体を震わせて自分を見上げてくる。
その後ろでは風が攻撃を放つ音と呻き声をリズミカルに聞いていた。

「あのあのあの!それってヤバいんじゃ!って言うか、校内案内しない方が良いんじゃ!!」
「気にすんな、コラ!オレ達が好きでしてるし、ムシャクシャした時とか校内歩きまわって八つ当たりしてるからな!コラ!」

けらっと笑うと、綱吉の顔が更に蒼白した。
まぁ、見た目から戦闘タイプには見えないし、仕方ないだろう。
おじが勝手に入れた学校だからという理由で転入しきた様な奴だ。何も知らないかもしれない。
どさっ、と音がはっきり聞こえたと思うと、急に静かになった。
そして騒がしいと思えるほどの拍手喝采、黄色い悲鳴、驚愕の雄たけびが空間を包んだ。

さすが風さん!十人をたった一分で!
風さぁ〜ん!さすが〜っ!
って!あそこにいるのコロネロだ!コロネロ先輩もいるぞ!

「え…これって…」
「実はアルコバレーノクラスで当時のまま生き残ってるのってオレと風、リボーン、スカル。クラスには居るんだがマーモンとヴェルデっていう奴だけなんだ―――だからお前、結構珍しいんだぜ?コラ!」
「えぇ?!そ、そんなに?!」
「えぇ。そう言っているつもりなのですがね」

風は爽やかな笑顔を浮かべて、戻って来る。
汗一つかいていない辺り、本当に良い運動したと思っているんだろう。

「特待生クラスは、基本転入生なんて来ないんですよ。負けた方から名簿から引きずり落とされていつの間にか違う方がいらっしゃるんです―――編入試験、大変ではなかったですか?」
「え?う〜んと…――――」

首を傾げた綱吉は、腕を組んで――――本当に困っているようだった。



「そんな、大変だった覚えは…無い……かな…」



爆弾投下、の瞬間である。
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