多数派が最初に決めた政策手段を実現するために、議論もしないで猪突猛進する。これは政治というより行政なんですよ。単なる行政の執行です。消費税を増税するためにいろいろと手続きを踏む。その間は議論をする必要はない。もう結論は決まっているから。これは政治の決断主義というよりも、日本人が死ぬほど嫌がっている官僚主義です。政治主導といいながら、実は政治家が官僚化しているのです。課題を先送りせず、ぶれずに執行するのが行政なのですから。
では、政治とは何かというと、議論をすることなんです。橋下大阪市長は、くっちゃべってばかりいないで具体的に実行しろ、とよく言います。けれど、具体的に実行するのは官僚の仕事です。くっちゃべらないのなら、議会は何のためにあるのかという話になる。
そもそも、議論する以外に政治のやり方があるのでしょうか。彼がやろうとしているのは究極の官僚主導で、実際、彼のもとには元官僚がたくさん集まっている訳です。
(中略)しゃべることに意味かないというのは、有権者をバカにした物言いです。橋下さんはツイッターなどで『文句を言うならお前が市長をやってみろ』と言う。しかし市長は一人しかいない。それを有権者に言ってみたらどうか。とてつもなく有権者をバカにしたセリフなんですよ。でも、彼は支持を集めている。ということは、この国民はバカにされたがっているし、官僚主導の世界を欲しているんですね。
僕は官僚主導の世界なんて絶対に嫌ですよ。政治主導の世界を望ましいと思っている。その代わり政治の世界とは、議論は尽きないし、何事もなかなかうまくいかない。自分の限界を感じるし、失敗ばかりするし、人には批判され誤解される。そういう面倒くさいものです。でも、それに耐えないと政治にならないんです/中野剛志