『今日も1日お疲れ様でしたー。カンパーイ!!』
『かんぱーい…』
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別に来たくはなかったけど、暇だったし酒飲みたかったし…
てか店長の隣ってマジだるい。
飲み会で気を遣うとかあり得ない。
(※普通はそういうもんです。)
てか周りの人たちとほぼ面識ないし。マジ来なければ良かったかなー。
とか何とか頭の中で愚痴はいてると、目の前の男の子と目が合った。
茶髪で前髪長くて、黒いスボンにシャツとベストを合わせて、大きな十字架のネックレスをしている。
うん、とてもチャラそう。
とりあえず愛想笑いくらいはしてやる。
にこ、っと笑うと同じように笑顔を返された。
その後その男の子とは会話も無いまま、飲み会は終了した。
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『あー、疲れた…』
家に帰り着くなり、ドサ、っと荷物を放り投げ、化粧も落とさないままベッドにダイブ。
化粧落とさないと肌荒れるなー、でも眠いなー、まぁ2時間くらい仮眠とろー。
結局起きたのは次の日の朝。
目覚ましはかけてなかったけど、バイトには余裕で間に合う時間。
とりあえずシャワーを浴びて、化粧をしなおす。
化粧をしてる時が一番楽しい。ブスがそこそこの顔になっていく様を見るのはなかなかの感動を覚える。
むしろ化粧じゃなく、芸術じゃね?
お母さんにも褒められたし。
いつものようにメイクばっちりの顔で出勤すると、事務所に昨日の男の子がいた。
『あ、お疲れ様です。』
『お疲れ様でーす』
語尾伸ばすとか、ますますチャラいわ。
他に話すこともないので、挨拶もそこそこに私は売場に出た。
その時の私はまだ、この挨拶のやりとりの意味を知らなかった。
『おねーさん今暇なの?よかったら一緒に遊ばない?』
『いや、今からバイトだし。』
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最悪の出来事から5年が経った。
あれから私はとりあえずダイエットをし、眉毛を剃り、毎日肌の手入れをし、化粧をするようになった。化粧はアイラインがっつり、つけまつげバッサリのギャル系。
服装もダボダボしたやつから、ボディラインを強調したものを選ぶようになった。
髪型も黒髪天パから茶髪ストレートにした。ちなみに前髪は真ん中分け。
こんだけいろいろ手をかけると、ブス日本代表のような女も、ナンパされるくらいにはなるらしい。
でも、ごめんね。私はそのへんの尻軽女とは違うの。ていうか本当に私とデートしたいならスッピンの状態の時に声かけてね。そしたら考えてあげないこともないよ。
なんて偉そうな事を言ってる私は、彼氏いない歴=年齢=処女という残念な女なのである。
見た目のせいか、バイト先の人たちからは、彼氏いそう、遊んでそう、性格悪そう、的な感じで見られている。
違うの、私の中身は純潔乙女なの。
と言っても誰も信じてはくれないわけで…、てかギャグだと思われてる。
誰がそんなくだらないギャグぶっ放すかよ、馬鹿どもが。
あーどっかにイケメン転がってないかなー。あ、爽やか系で。ホストみたいな前髪チャラチャラした奴は無理。
そんな事を思いながら、毎日つまんないバイトに勤しむ私。
だったはず…
『比良川さーん、明後日飲み会するけど来ないー?』
店長からのその言葉があるまでは…
『俺、可愛い子じゃないと無理。』
『・・・』
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そうやって中学卒業時に私、比良川りんの恋は終わった…
あれ?私の事好きだったから、いつも話しかけてくれてたんじゃないの?私の事好きだったから、土曜日デートしてくれたんじゃないの?私の事好きだったから(以下略)
全部私の勘違い?( ^ω^ )
いやいやいや、1年の時に一緒のクラスになって、たまたま席替えの時隣になって、数学の授業の時先生に当てられてわかんなくって、オロオロしてたら隣から小声で『2√5』だよ、って教えてくれて恋におちて…
そこから毎日話すようになって、冗談で喧嘩っぽいこともしながら楽しくスクールライフを送ってたはずなのに…
そんで、2年になったらクラスが別々にな
ったけど、職場体験でたまたま一緒になって、『これって運命じゃね?』って思いながら、これまた楽しくスクールライフを…
って、あれ?私何で過去を振り返ってるんだっけ?
ああそうだ、私フラれたんだった。
可愛くない…
=ブス…
私はブスだからフラれたのか…
髪型は天パ、目は腫れぼったい一重、申し訳程度の高さの鼻、眉毛は整えてない、身長150cmのくせに体重は60kg…
うん、ブス要素しかねぇ…
このままだったら彼氏なんか一生出来ない。恋も出来ない。ていうかとりあえずアイツを見返してやりたい。
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これが私の終わりと始まり。